★Gallery Note

2008・7・17(木)

 加茂野あきこさんは外国暮らしが長くまた育児に多くの時間を費やさなければならない生活の中で、中々創作活動ができませんでしたが、彼女のポテンシャルな創造の力はとても大きくて未来を期待させられるものです。優しく力強いけれど、決して甘くなりすぎない童画の世界観はひじょうに貴重なものと思われます。
 もうじき双子の女の子を出産予定の加茂野さんには楽しそうなにぎやかな人生が待っておりますが、伝統の良さを内包しながら新しく誰にも真似のできない作品の誕生も、心待ちされます。

 備前焼はとても人気があり本当に多くの作家の方がおられますが、天野智也さんの作品には何かとても引きつけるものがあり、初めてのお客様にも心から受け入れていただく事ができました。10mもあるのぼり窯を一人で作り、時間をかけて土を作った後に、形にし、8日間かけて焼き上げるという根気のいる作業です。若々しくシンプルな感覚と日本の伝統の美しさが融合した素晴らしい作陶展は、道行く方々も興味を持たれ、大好評でした。来年も開催致しますので、どうぞ覚えていて下さいね。

 岡山の天野さんに続きまして名古屋からの茶畑さんの個展です。
 茶畑さんは、人も作品もほわっと暖かくて、とんでもなくおかしな優しい人で、お会いする度に驚いたり感激させられたり笑わされたりと、忙しいのです。
 どこか遠くからいらして近くのホテルに泊っている画廊の前を通りがかったおばあさんと茶畑さんの会話です。
茶畑「おばあちゃん、どこ行くん?この木の実(画廊のテラスのジューンベリー)おいしいよ。どこか探してるの?」
おばあちゃん「この辺りにおいしい食堂はあるかね?」
茶畑「何が食べたいん?」
おばあちゃん「ラーメンと餃子。」
茶畑「そうしたら天○一がいいよ。餃子もおいしいよ、餃子はこんなに大きいから(と言って手で餃子の形を作る)半分のがいいよ。」
おばあちゃん走り去りながら「青山の人は本当に親切でありがたい・・・。」

 名古屋の茶畑さんの次は京都代表のくまざわのりこさんです。
 ご両親が丹精を込めて作られた美しい庭に咲く植物をテーマにした作品展でした。くまざわさん達が住むまでは、荒れ果てた石ころだらけだった広い庭を年月をかけて生まれ変らせました。そんな広大な庭のある邸宅がなんと社宅なのだそうです。
 くまざわさんの、刺繍糸を刺繍していくのではなく、画面に貼付けて行くという独特の手法はすでにおなじみのものですが、淡い色彩の花びらを形作るそのマチエールはあたかも 植物界と手を携えている様に、自然に息づいていています。
 オリジナリティー溢れる柔らかな不思議な世界観は、男性も含めて人々を強く魅きつけます。
 
 藤本かずみさんの展覧会は、くまざわさんの白く淡い色彩の静かな世界と対照的にビビッドでポップな色彩溢れる立体作品が楽しい気分を誘います。
 細い針金に刺繍糸を多色使いでくるくると巻き付けて、それを素材として様々なものを造形していきます。椅子、靴やバッグ、鳥や動物から空の雲や野菜の形の照明器具まで作り上げます。
 作品の表面を流れるテクスチュアの流線的なラインは優れた彫刻作品の様な魅力があります。夕暮れ時にはそれらの作品内部の照明が光り、空間を照らします。

 田村セツコさんはご本人自身が作品です。作品の中から飛び出していらした様にファンタジックに存在されています。作品の中の少女たちと同じように普遍的に可愛らしい永遠の少女性がきらきらと周囲の人々を輝かせます。
 また少女たちは大人の人々も顔負けの判断力と機知に富んでいて、その外観からは伺い知れない知恵者でもあるのです。
 50年もの長きに渡り第一線でご活躍なさっている田村セツコさんの秘密を、垣間見せていただきました。
 

 


2008・5・21(木)

 
 新しい密やかな才能が表示されました。きむらみほさんの、さり気なく新しくクールなしかも愛情ある視線が、たくさんの人々からの支持を得た様に感じられました。父親である木村勝氏のスーパーセンスを内包して、またそれとは別の味わいの作風を見せてくれるみほさんのこれからの活動が楽しみです。


 舟橋全二さんの紙による作品展は、フランス人の夫人の出身地である南フランスの風景画が描かれたものでした。
 フラットな紙で構成されたにも関わらず、画面は柔らかな気配がたゆたっており、穏やかな風景の空気感が表情豊かに会場を包み込んでおりました。そして多くの方々が舟橋さんの作り上げたエネルギーを感じられ、記憶に刻まれた様に思われます。


 国籍は南米のどこかの国、神話的な様でもあり普通の人の描写の様でもあります。キャンバスに半立体のテラコッタの風合いで表現された国井節さんの作品は、いつの頃からか独特の世界観をもつものになりました。
 暖かな陽気なエネルギーが伝わって来て、作品に触れる方が元気になるという素晴らしい作品展でした。


 和田誠さんと安西水丸さんのコラボレーション展が今年で6度目を迎えました。今回のタイトルは「アドリブ」。いよいよお二人のコラボが収束に向っているのでしょうか?
・・・と思いましたが、増々自由な楽しさが会場に溢れます。
自由に制約なし、というテーマは人によったらかえってつらいテーマかも知れませんが、お二人は、今回が一番楽しかったそうです!

 


2008・4・11(金)

 
 最近孫と子供が同時期に誕生する、という快挙(?)を遂げたスズキコージさんの賑やかな個展が終わりました。コージさんとは公私を含め驚かされたり感激させられたりあきれたり、と、長いおつきあいの中で、この時代を生きる天才の希有な個性をウォッチングさせてもらっています。 
コージさんのアーティストライフの中でいくつものエポックがあり、「ゼレファンタンケルダンス」という線画作品の集大成的な画集であったり、続けて受賞した時の絵本であったりしたと思いますが、さらに大きなピークを友人としては期待してしまいます。ドキドキさせて下さい、コージ君!
 
 木村桂子さんのすっきりと力強い線から構成される作品は、多くの人々の支持を得ています。
 真っ白い紙に向い、筆で描く時にはとても緊張を伴うことと思います。 ご自身の状態や調子が比較的ストレートに表れるたいへんな表現方法と思いますが、潔く描かれた人物や物の形の中に桂子さんの世界観が込められていて生き生きとした魅力的なパワーを感じさせられます。
 彼女の作品は音楽の世界ともとてもリンクしていて、ジャズのCDジャケット等の仕事も多数行っておりますが、今回も素敵な世界的なボサノバのミュージシャンの仕事をすることになり、とても楽しみです。 

 久しぶりの梅田美代子さんの銅版画展でした。京都の美術大学で教鞭をとっていらっしゃる梅田さんは、新しく開設される学部の仕事等でお忙しく、中々個展を開けませんでした。そんなお話を伺っておりましたので作品を拝見した時にはその充実ぶりにとても驚かされました。
 技術は一層確かなものとなり、繊細な音楽が奏でられている様に美しい作品を支えています。ご自身では意識していないかも知れませんが、梅田さんご自身の中に京都の奥深い伝統的なヴィジュアルの要素が染み込んでいて、創作の礎になっている様に思われます。そして独自の美的世界を築き上げられ、素敵でした。

 偶然なのですが、須川まきこさんは前週の梅田美代子さんの京都の大学の教え子です。須川さんをはじめ梅田先生の随分多くの教え子の方がスペースユイで個展を開催しておられます。須川さんの学校だけでなく、京都からの方はとても多くて、画廊と相性が良いのかも知れません。京都と相性が良いなんて光栄なことです!
 
須川さんの作品はロットリングで描かれています。可愛らしくエロチックな絵をさらっとペン画で描いているという風ですが、人体を一本の線で迷いなく描けるという事は、相当なデッサン力と思われます。確かな技術と優れた感性を合わせ持つ須川さんの作品はとても魅力的です。才能の伸び盛りの季節、本当にがんばってほしい方のひとりです。 

 実力派イラストレーター松本圭以子さんの作品は、いつも安定したクオリティーで発表されます。画面の構成のちから、描写力、とバランスが良く、いつも安心して作品を鑑賞できます。今回はうさぎのキャラクターがモデルの作品を沢山描きましたが、パステルの深い赤の色彩が、薔薇の花びらやビロードの質感にも似て、テクスチュアーの表し方も見事なものでした。
 動物の表情の確かな表現力は、とても力を感じさせられるものです。デザインや編集といった、イラストレーターに仕事を依頼するサイドの方としては、こんなに頼りになる方もいないのではないでしょうか?

 

 

 


2008・2・22(金)

  宍道湖のほとりにアトリエがあって、仕事が終えると湖の水辺を散歩する事が日常という松本樸さんの木のオブジェの展覧会でした。松本さんのお話から、松江市の市街地の美しさやいつもクロスする様に虹のかかっている宍道湖の魅力がひしひしと伝わって来て、いずれ是非行かなくてはならないという気持にさせられてしまいます。そばには出雲大社や津和野という名跡もあって、島根県への興味が尽きません。素敵な環境で造られた質感も優しく独特の作風のオブジェは、各方面から注目されており、これからの広がりを想像させられます。
 松本さんは音楽の才能もあって、ひじょうに優れたシンガーソングライターでもあります。

 杉田比呂美さんにしか描けない微妙な繊細な感覚の作品世界は、誰の心の中にも在るなつかしさを誘います。今現在を描いている情景なのに過ぎ去った時間の様に感じられるのは何故なのでしょうか? 平凡なごく普通のモチーフを淡々と表現していても、乾いたちょっとSF的な空間にも感じてしまいます。
 たいへんな事とは思いますが、清潔な詩人の心を持ち続けなければ表現できない世界観を、たいせつに持ち続けていただけたら・・・・、と願って止みません。

 二度目のカーリーコレクション展は政岡勢津子さんが作ったクマや女の子のキャラクターデザインが可愛らしく、一度目と同じく大勢のファンが訪れました。昨年からたった一年でギャラリーを埋め尽くす新作グッズをデザインし、実際の販売用に制作した政岡・グラハムのお二人のエネルギーには脱帽です。政岡勢津子さんと代官山のお店「カーリーコレクション」のオーナーであるグラハム八千代さんはいとこ同士ということもあり、デザインと商品企画を各々が担当しておりますがそのコンビネーションは絶妙です。政岡さんはデスクでデザイン画を描き続け、八千代さんは素材調達や制作の為世界を駆け回っています。三度目のコレクション展も来年4月に予定されておりますので、どうぞお楽しみに!

 キッタヨーコさんのガラス作品は大がかりなものも多く、個展の度にまるで引っ越しの様な梱包と荷造りの作業が伴うので、傍から見ていると本当にたいへんそうに見えます。明るい性格で人気者のキッタさんは美術館や地方のギャラリーなどのオファーも多いので、タフでなかったらできないと、本当に肝心してしまいます。
 ガラスや陶芸の方は制作に火を使い、その管理に気も使い体力も消耗しますのでたいへんな作業と思います。
 作品を制作することに組み込まれている身体を酷使する労働の部分は、作品を見る側はわかりませんし、解る必要もないのかも知れませんが、最近ガラスや陶芸の作品を扱っていてしみじみと感じた事でした。

 毎年開催して頂いている民野宏之さんの展覧会が始まりました。清潔感に溢れ、凛とした気配を漂わせる民野さんの作品は、回を重ねる毎にとても良い形に民野さんを理解して下さる方やファンの方を増やしています。
 今回はDMにする作品がいつもの雰囲気と随分違い、驚かされました。画廊では今迄の作品との繋がりがもう少しある作品をDMにしたらどうかという意見でしたが、最終的には作家の意志が一番たいせつですから、民野さんの入魂の作品である靴を描いたものになりました。民野さんは「靴」というモチーフを模様の様に描きたかったのだそうです。今回は筆のタッチも今迄とは違っていて、先に進もうという民野さんの積極的な姿勢が見られました。

 そんな民野さんの個展会期中に、リトアニア大使館主催の「リトアニア国家回復90周年記念レセプション」という珍しい催しに行って参りました。
 1990年にソヴィエト連邦が崩壊して、リトアニアが自由な国としてスタートした直後に若いアーティストの展覧会を開催するという、大げさに言えば歴史的な局面に触れる様な経験をさせて頂きました。
 このお話を受けた時にはまだ大使館も存在せず、FAXでのやり取りも繋がりづらく、入国手続きを含めた様々な事務的な事柄で苦労した事を思い出します。そんな時に掛け橋の役割をして下さった、当時20代前半のガビヤというまだ少女のようだった女性が、ついひと月前にリトアニア大使館勤務となり、日本への赴任が決ったという訳です。
 当時リトアニアの人々も、ソヴィエトの支配から解放された様々な国の人と同様に自由を獲得した喜びに溢れ、特に若い人々が積極的に世界に向って羽ばたいて行く様子が見受けられました。それにしても50年間も共産体制が続いていた国で暮していると急激な社会変化に付いて行けずに、40歳代以上の大人達は、生き方の方向を定めるのが本当にたいへんだったということを聞きました。その為か外交や政治の仕事でもリトアニアでは若い世代が人々をリードしていて、当時の大統領も30代の若さでした。
 ガビヤは以前から全方位に渡ってひじょうに優秀な人で、民間大使的な困難な仕事を知的にスムースに運んで下さり日本の人々を驚かせていましたが、成長して増々素敵な大人の女性になった彼女は英語、日本語、リトアニア語を自在にあやつりながら今会のパーティーの司会を立派に務めていました。
 大使館では文化担当というセクションにいるガビヤと、またいつか一緒に仕事ができるかもしれません。中世のお城や教会がおとぎ話のようにそのまま残っていて、しかも魅力的な近代国家でもあるリトアニアからは、哀しい歴史を乗りこえて今花を咲かせようとしている、羨ましい様なエネルギーが伝わって参ります。
 

 

 


2008・1・14(月)

  新しい年になりました。
今年もスペースユイでは楽しい展覧会がたくさん予定されております。
2008年もどうぞよろしくお願いいたします。
一度作り上げた自分の作風を変え、新たな個性を築いていく、ということのたいへんさを昨年12月の中川洋子さんの作風を見て実感しました。絵を描く事が上手でどんな風にも描けてしまう人の悩みでしょうか。ご自分の資質、個性に適った方向性をつかみとることがどれだけ大切なことか・・・。がんばって頂きたいと思っております。
2007年最後の展覧会は安西水丸さんの「村上かるた」原画展でした。水丸さんと村上春樹さんのコラボレーションは良く知られておりますが今回の「村上かるた」はお二人の意外な側面を彷彿とさせる展覧会でした。人々の滑稽な面、おろかな面への視線がホットでポップで独特な風味の作品展でした。実人生での人々のシリアス感や苦い味をくるっと軽いおかしみにシフトチェンジしてしまう水丸氏の腕前は見事なものでした!
2008年の出発は、我がギャラリーノートに贅沢にも素敵なイラストレーション「ゆいちゃん」を提供して下さっている山口マサルさんの作品展です。
山口さんの天才的妄想的イマジネーションは止まる事を知りません。ギャラリーにいらした方は、山口さんの頭の中で展開されているパノラマ及びパラノイア的空間に驚嘆された事でしょう! 山口マサル博士の手にかかればどの様な時代もどんな空間も無限に創り出されて、不思議な空気の中、少女や動物やサムライたちが楽しげに息づき始めます。



2007・12・24(月)

  昨日、田代卓さんの大きな作品をフランスに送り出す作業を終えました。ギャラリーの前を偶然通りかかったパリのミュージシャンの方が購入して下さったものです。丈が120cmある田代さん独特のキャラクターの男の子と、それより一回り小さなゴリラの顔のアップの作品がフランスへと運ばれて行きました。
 今回、画廊の外から見える作品に魅かれて、スエーデンやフランス、中国等外国の方がとても多くいらして下さった様な気がします。はっきりとした明快なキャラクターは、田代さん自身のキャラクターと相俟ってインターナショナルに人気です。
 スタジャンを着た丸い顔の男の子と、可愛くてグラフィカルなゴリラの肖像がパリのミュージシャンのスタジオに飾られて、いろいろな人々の目に触れる事を想像しますと、思わず笑いがこぼれてしまいます。 田代さんの個展が終えて、沢野ひとしさんの力作が発表されました。男性も女性も老いも若きも、そして様々な分野の人々が後を絶ちませんでした。毎年ながら沢野さんの人気にはいつも驚かされてしまいます。
 大きな身体の沢野さんが注ぐ、小さな動植物や女の子や普通の生活の中の出来事への優しいまなざしが、人々の心に響くのでしょうか。山男でもある沢野さんの山々の絵は真っすぐに清々しく、毎年すぐに完売してしまいます。
 まだ見ていないのですが、「放埒の人」という沢野さんをモデルにした演劇が作られたというお話を伺いました。相対する矛盾を孕んだ個性を同時に持ち合わせた沢野さんの作品が、面白くない訳がないかもしれません。  



2007・11・26(月)

 吉泉功一さんの作品がとても渋くて良い味になってきた様な感じがします。ロブスターや牡蠣等、食べ物のモチーフが本当に美味しそうに描かれていて、思わず、唾液の分泌が良くなる等、生理的反応が出てしまいます。筆者と同級生同年齢ですが、とても若く見える吉泉さん。しかしながらこんな味の出せる年齢なのだなー、としみじみしてしまいました。
  
 長年こういう仕事をしていますと、時々思いがけないお仕事との出会いがあります。マラリアを予防する繊維で織られた布地にイラストレーターの作品を使って制作したものをアフリカに供給したいとのお話です。大きな繊維メーカーが推進しているプロジェクトです。少しも知りませんでしたが、未だにアフリカでは毎年200万人もの人々がマラリアで亡くなっているのだそうです!
 アフリカ諸国の女性達は160cm×110cmのカンガという布を巻きスカートやターバン、また赤ん坊をおぶったりする時にも使用します。このカンガという布地を日本のイラストレーターのデザインで作ろう、という試みの仕事です。以前カンガの写真集を見ましたが、シャープで美しくアフリカの風土に適った完成度の高いものでとても感激しました。デザイン供給の側としては、カンガの世界に日本人アーティストの参入の余地があるものだろうかと疑問を感じましたが、デザインは自由な既視感のないものの方がかえって現地の人に喜ばれるのではないか、という担当の方の意見です。そんな風に言って頂けましたので、とても仕事がし易くなりました。本当は急いで進めなければならない仕事ですが、役所が絡んだ手続き関連の進行がスムースに行かないため、少しもたついてしまいそうですが、実現に向けてがんばって行こうと思っています。

 島袋千栄さんの作品は、動物や少女達また豊満な女性等にもとても愛情深いものが感じられます。ペインティングや線画のタッチ等、割合たくさんの引き出しがあって、どの引き出しにもアイデアがぎっしり詰まっていそうです。お話作りも得意な島袋さんは絵本の世界に向いていそうですが、今は他の仕事で忙しそうです。
 時々線のタッチにドキッとする事があり、すごい作品だなー、と思わせるものがあります。

 信楽の陶芸作家、上田光春さんの二度目の作品展でした。今回もシンプルで格調高い作品を展示して頂きました。窯焚きのお話を伺いましたが、あまりのたいへんさに驚かされました。寒い日も暑い日も5分おきに三日と半日も薪をくべ続けて火を絶やさない様にしているのだそうです。12時間おきに他の人と交代するそうですが、そんなお話を伺うと上田さんの陶芸作品、とてもありがたく感じてしまいます。いらした方どなたとも気さくにお話も弾む上田さんは作品の印象とは少し違って、明るく楽しい方です。また、今回は陶器の洋服にあたる仕覆も揃えて出品されました。上田さんの奥様の制作です。陶器に合わせた布地の選び方が見事でした。年代物の布地、ヨーガンレールの布、また裏地には草木染めの薄い絹地を使う等、デリケイトな構成が見応えのある素敵な「仕覆」として完成度の高い作品となりました。



2007・11・2(金)

  高校生の頃から画廊に遊びに来ていた、飛び切り風変わりだった男の子が大学生になり、社会人となり、いつからか足が途絶えましたが、最近衆議院議員になって突然画廊にあらわれました。
 彼は何事にもエネルギッシュで、学生の頃はビジネスにも興味があり、画廊の若い人の作品を僕が売ってあげるからと、鞄にいれて絵を売り歩いたこともあります。残念ながら成果は0枚だったのですが・・・。いつも息せき切って走っている人だなー、と思っていましたが、今も走って画廊にやって来ます。
そう言えば将来議員になると、いつも言っていた事を思い出します。
 そんな彼がシーノ・タカヒデさんの展覧会に見えました。中部アフリカのコンゴやガボン等数カ国を受け持つアフリカの大使と一緒です。ケニアと行き来を続けて友好関係を築いているシーノさんとの作品に興味を持たれ、サントメプリンシペという小さな島の国家で行われるヴィエンナーレの話やガボンで開催される全アフリカの閣僚が集う、洞爺湖サミットの前に行われるやはり日本でのアフリカ会議(名称?)の前哨戦としての催しのイベントへの参加のお誘い等で、話がはずみました。何だかギャラリーらしくないお話になってしまいましたが、議員や外務省がこの様な形で美術に関わってアーティストをサポートしながら仕事を広げて行くのはとても興味深いことと思いました。 沖縄小浜島から見える、お日様の匂いのする様なはんまけいこさんの作品展。
 絵本等で活躍のはんまさんの作品はヨーロッパのテイストを感じさせる可愛らしくてダイナミックな独特の画風ですが、今年は少し趣きがかわりました。渋く、より大人っぽく完成度が上がっていました。
 日本の最南端の島に暮すはんまさんはとてもロマンチックな生活をしているのです。夜は月明かりしかなく、月の影ができるのだそうです。本当の真っ暗闇なんてみられない東京に暮す身としては羨ましいかぎりです。



2007・10・15(火)

 一年以上前から決っていたクリスマスの企画展が直前で開催できなくなってしまいました。
 そこで急きょ決ったのがとても楽しくてゴージャスな展覧会。今年の3月に発行された村上春樹さんと安西水丸さんの共著、村上かるた「うさぎおいしいフランス人」の原画展です。
 村上さんが書いた「あ」から「わ」までのかるたの文に描いた水丸さんの絵がファンキーでちょっと馬鹿々しくていいのです。村上さんと水丸さんの息がぴったり合って、ちょっと不思議なかるたができあがりました。
 45点のかるたの小さな原画と村上さんの「かるた文」と、シルクスクリーン作品を展示したら、いったいどんな形容がふさわしいのでしょうか?・・
という様な今迄にない感覚の空間が展開されそうです。とても楽しみな素敵なクリスマスの展覧会になりそうです。
 それにしても水丸さん、村上春樹さん、どうもありがとうございます!
 教えている生徒たちからウッキーと呼ばれていて、卒業生たち迄がウッキーを尋ねて画廊を訪れます。特に女の子たちに人気の卯月俊光さんです。クリエイティブな才能と共に、わけへだてなくどんな人にも暖かく接するこんな人ばかりが先生ですと、教育現場も変っていくことでしょう。
 卯月さんの人柄を反映した優しい作品は、どんなインテリアにもバランス良く掛けられそうです。今年は大きな作品が調和が取れていてインパクトもあり、評判が良かったです。
 シルクスクリーンのような表現でインテリアや風景を描いていた大野郁子さんですが、昨年から個展の「作風」が少し変りました。インテリアの一部であるファブリックのテキスタイルをモチーフに展開したり、それらの素材のテクスチュアーをバックに自然界の花や木等を構成して独特な平面世界を表現しています。植物の他に水玉や幾何学模様等の形も参加して、全く既視感のない大野さん独自の世界を作り上げました。
 薄描きでまるで水彩画の様に一見淡く見える油彩画からは、気品高く優しい気配が漂います。新しいタイプの「幽玄」さも感じました。
 沢野弓子さんの8回目の個展です。女の人はバッグが大好きです。沢野さんご自身が毎年世界中を旅してコレクションした布、リボン、ボタンなど、バッグの材料になる美しい素材が部屋に山ほどストックされていらっしゃいます。
 沢野さんは、それらの素材を駆使して、自由に楽しそうにバッグを創ります。
色使い、素材の組み合わせ、テイストの世界観、全てが毎年新しく変ります。
 抽象画の様に、グラフィックデザインの様に、コラージュする様に、絵の具の代わりに布と糸を使って作られたバッグは、さながら持ち歩ける作品の様です。変化しつつ、根底は変らない沢野弓子様式への興味は尽きません。



2007・9・24(月)


  タイで暮らすMOMOさんの部屋の窓から見える日常を描いた作品展です。
 MOMOさんの家はバナナや大きな果実の実る亜熱帯の木々に囲まれています。つまりMOMOさんは森の中に住んでいる、というわけなのです。元来おしゃれなセンス抜群のイラストレーター小渕ももさんの、このちょっとシュールな現実は、日常に埋没してしまっている人間にとって胸を打たれるものがあります。
 文明の余剰なもののないMOMOさんの生活を想像してみることがあります。MOMOさんは大きな樹木を見上げて樹々の間から透けて見える空を描きます。家には鳥やヤモリや大きな蝶や様々な生き物たちが訪れて、画家の良きモデルとなってくれます。そしてスコールの後には、地面から立上る森の匂いを吸い込んで水蒸気や土の気配を全身で感じる・・・。
 こんな風に暮らしていたら、MOMOさんの中のアンテナが大自然と響き合って、人々に共感と感動をもたらす素晴らしい作品を描かせてくれました。 
 キュートでやんちゃでちょっと怒っていたり、泣き面をしていたりと、表情豊かに動物たちを描く仁後真理子さんです。
 仁後さんの、優しく鋭い人間観察から生まれたこれら動物たちは、人々の心をとらえて離しません。動物たちが実は様々な人間感情を託されて、生き生きと画面の中を飛び跳ね人の心を代弁しているのを感じられます。
 仁後さんの動物たちはデビュー以来すぐに絵本や雑誌、グッズにと大活躍が続いておりますが、今回「車」という新キャラクターが登場しました!自動車なのに何故か彼女の動物と同じように表情があり、個性があるのです。この車たちも来年、福音館の絵本でお目見え致します。
 今回少し残念だったことがひとつだけありました。先回の個展の時のご縁で雑誌クロワッサン誌で佐野洋子さんのエッセイのイラストレーションの連載が決りましたが、佐野さんのご都合で連載が2号で途切れてしまったことです。皆でとても楽しみにしていただけに、残念なことでした。


2007・9・10(月)

   川上越子さんの個展は、一目で長い時間をかけて作成したとわかるたいへん見応えのある作品展でした。元々、野菜や植物の絵本で定評のある方でしたが、深みのある色彩が様々な歴史的背景を感じさせる今回発表された作品は、川上さんの新しい境地を見せて下さいました。
 まるで宗教画の様にも感じられるという方や、画面から滲むインテリジェンスに多くの方が感銘を受けておられましたが、ご本人は全く気さくな明るく包容力のある方です。周囲は常に川上さんに魅かれる沢山の人々で一杯でした。
 シルバーアクセサリーのH&Hの20周年展が開催されました。20代から橋本、服部の2人が始めたH&Hの展覧会は、人の流れと動きがいつもの画廊の空気感とは全く異なります。この期間は、VIVIDな若々しいショップにシフトチェンジするのです。女の人はアクセサリーが大好き! H&H本人達が心から楽しみながら作ったアクセサリーの数々を、女性達は首にかけたり、手に取り、指にはめ、悩んだ末に自らの宝を毅然として決定するのです。
 シルクスクリーンという技法とは思えない透明感を湛えた印象で、太古の地面を吹き渡る風や光や音が描かれます。木々の生い茂る森と共に生きる生命体たちの息吹を感じさせられる田村愛(まな)さんの作品世界です。田村愛さんの作品展では、森羅万象、自然界を描く壮大な世界観と、若い女性の等身大の身の回りの優しい風情が同時に違和感なく提示されます。
 会場では、技術力の確かさに裏打ちされた作品の品格が立上り、訪れた人々の心をつかみます

 


2007・8・4(土)

   今年も永井宏さんの会期が始まりました。永井さんの人柄のせいか、この季節になると何だかすごくほっと、リラックスできます。永井さんやお友達が風に吹かれながら表のテラスで談笑している所を見ると、ここは一体どこ?海辺ではないよね、という感じです。
 今回の作品はHOUSE WORKERの永井さんがお掃除しているシルエットも登場し、生活の身の回りのモチーフをシンプルなキュートな形にきりとり、教えてくれない秘密の手法によるマチエールの冴える平面作品として仕上げています。そして画面には永井さんのつぶやきのような短い一行の詩が添えられて、それらの小品をブロックごとにまとめた展示の仕方もすっきりと見やすいレイアウトになっています。ぜひ画像でご覧下さい!
 鎌倉の市場で新鮮な野菜や魚介類を仕入れ、今年もオープニングには永井さんのお友達の岡田シェフが集まった人全員に豪華なたっぷりのお料理をふるまって下さいました。おいしいワインも冷えたシャンパンも一緒です。もう9年間続いておりますが、永井さんも何て素敵なお友達がいるのでしょう!岡田シェフとお料理の様子は、永井さんの展覧会のページをご覧下さい。
 また、下の画像は先週の主催者の高田喜佐さんの展覧会期中の、弟の高田邦雄さんとの仲良しショットです。

 



2007・7・31(火)

  7月はFAMILY WEEKSというような4週間でした。
 第一週目は本当のファミリーである妹かほるの個展でした。身体に合わなくて、長年馴染んでいた油絵の具をアクリル絵の具に替えてまだ日も浅いためか、画材のこなし方が志にまだ追いつきません。もう少し先が楽しみです。
 第二週目は司馬かおりちゃんです。独立心の強い彼女は高校生の時に個展の申し込みにいらして驚かされました。今年U.S.A.のロードアイランドの優秀なアートカレッジを卒業直後の、二度目の個展を開催しました。とても映像的な、グラフィックやアートディレクションをきちんと勉強して来たことを想像させられる作品でした。どのような分野で活動する様になるのかが楽しみな、力量を感じさせられる23.5才のかおりちゃんでした。
 第三週目は川村みづえ、ナツミ、ふゆみ「3ROOMS」。ママと娘2人の本当のファミリー展です。みづえさんとは画廊発足時からのおつきあいになります。ナツミさんは先週の司馬かおりさんと同じく高校生の時に個展を開きました。彼女のフレッシュな自由な発想は素晴らしいものでしたが、大学卒業後イタリアに渡り、貴重な才能が日本に帰るのは10年の後となりました。長女のふゆみさんご自身は、優しい清楚なイメージの方ですが、彼女から湧き上がる作品はユニークな不思議な世界です。良き環境で大きくなった所為かお二人の色彩感覚は素晴らしく、新鮮な強い印象を受けます。
 皆さんはレナウンのイエイエ娘のTVコマーシャルをご存知ですか?若い方は知らないと思いますがショートカットでミニスカートの女の子達が風を切ってさっそうと歩いているイラストレーションとバックミュージックのハーモニーが絶妙な、ちょっと広告史に残る様な作品の作者がみづえさんです。そして音楽がみづえさんのお兄さんの小林亜星さんでした。才能のあるファミリーです。
 第四週目は高田喜佐さんの展覧会です。喜佐さんは何ものにもとらわれない自由なのびのびとした沢山のイラストレーションを残されました。
 今回の展覧会ではイラストレーションといっしょに復刻版の靴も7種類限定10足ずつ発表致しました。手作りの為、少し高価ですが10足全部完売した種類もあり、喜佐さんの人気とパワーが忍ばれます。
 これらの喜佐さんの展覧会の全てをコーディネイトしたのが2才違いのお姉さんと大の仲良しだった弟の高田邦雄さんです。 個展のお話がすすむ以前から邦雄さんに頼まれて喜佐さんのイラストを何枚も何枚も額装させて頂きました。100枚を軽く越えていたと思います。
 自分もですが、ほとんどの靴が喜佐さんの所のだったため、困っているという人がとても大勢いらっしゃいます。オーソドックスなのに遊び心があり、エスプリが効いていて、何処にもない素敵な靴達でした。
 


2007・7・13(金)

  伊藤さんとは20代前半からのおつき合いなので、つい正道君、と今でも言ってしまいますが、すっかり立派なイラストレーターになられました。
 鎌倉にずっと住んでいらして、海の近くに素敵なgiogio factoryというご自分のアトリエ + ギャラリーを建てました。
 伊藤正道さんから生み出される可愛らしいキャラクターとモダンな現代建築空間という意外な組み合わせをモチーフとした作品は、今、という空気感を孕んだオリジナリティー溢れるものです。絵本、広告等幅広く活躍の伊藤さんですが特に絵本の世界等ではこの新しい感覚は貴重なものと思います。
 ポップな色の絵具使いなのですが鮮やかさの中に少しずつパウダー感覚が溶けていて、しかもペインティングのタッチで描かれ、相対する要素が融合した伊藤さんの作品は、多くの人々を魅了する「テイスト」を誕生させました。 沢田としきさんの作品を知ったのは、ヴィスコンティやヘルツォーク等の少し癖のある映画を日本へ紹介する仕事をしている友人の事務所に掛かっている映画のポスターを見た時でした。その後沢田さんの故郷の青森の国際芸術センターに出張で出向いた時に偶然お会いして、作品は勿論のこと、ご本人の柔和なお人柄にも惹かれて、思わず展覧会の開催をお願い致しました。
 今回の作品展でも「トランシルバニア」というジプシー映画(前記の友人が引いた)の一場面が描かれていましたが、沢田さんのフォークロアのエッセンスが素敵に表現されていました。
 沢田さんは北国の生まれなのですが、アフリカやラテンアメリカ等暑い国々を描くことが多く、音楽が聞こえる様な動きのある情熱的な作品が多いのです。
今回は、彫刻刀で板を彫って着彩するという技法がとても新鮮でした。
 

 

 

 

 


2007・6・27(水)

Tシャツの展覧会は年齢が若かったためか、本当に大好きで自分の趣味の様に毎年開催していた時期がありました。
 最初のきっかけになったのは、湯村輝彦さんのイラストレーションでした。何年間にも渡り、湯村さんのソロTシャツ展を開催したものでした。湯村さんはヘインズのTシャツと一体化した様な方で、Tシャツとリーバイスのジーンズしか着なかったし、展覧会会期中だけでなく、クリスマスのサンタクロースTシャツ等、一年中身につけ、作っていました。軽やかでキッチュな、時々すごくファッショナブルなTシャツが誕生した本当に楽しい数年間でした。「俺、年取って、Tシャツ着たくなくなっちゃった。もう作れない。」という湯村さんの突然の電話で、この企画は終わってしまいましたが、ご自身がTシャツ狂という位な方だったからこそ、あんなにも生き生きとしてフレッシュで、熱狂的に若者たちの心を掴んだのだと思います。
 その後は安西水丸さんや田代卓さん、山口マサルさん等の可愛らしいTシャツを随分たくさん種類を作りました。また、宇野亜喜良さん、横尾忠則さん、美美さん、小渕ももさんやタナカノリユキさん等、数えきれない程の記憶に残る名作Tシャツも生れました。霜降りの生地に小さな雪ダルマが全面に飛んでいる山口マサルさんのTシャツとショートパンツとのセットが大ヒットして、家内縫製工場が大変だった事等(母に縫わせていました。)、懐かしく思い出されます。
 今日では技術が進歩して作品のペインティングのタッチまでひろい、さらさらのタッチで再現できるようになりました。今回は油彩画タッチがメインのTシャツ展です。画期的なプリント技術を持つE&E社の提案から生まれました。
 民野宏之さんの個展の時のバラの油彩画からアイデアが浮かび、ファッションとしても素敵に着こなせるTシャツを発表できたら、という発想で企画しましたが、10人の新世代作家の方々のクオリティーがとても高くて、見事に期待に応えて下さいました。近々ショッピングのページにも載せますので是非ご覧になって下さいね。
 こんな時に、山口マサルさんの「ゆいちゃん」が載せられたらイイナ・・と思っておりましたら何と、メールで届いていました! 平面に、立体に、造形力を駆使してSPACEYUIの会場を今時GALの感性いっぱいに表現して、画廊を訪れる人、道行く人々を驚嘆させました。天井迄届かんばかりの可愛らしい顔のクモ女の足元にはミラーボールが回り銀色の光を周囲に放ちます。マンチェスター生れの山本雅子さんのテイストが滲み出た壁面いっぱいに飾られたひとつひとつ異なる創意に満ちた額縁風オブジェは、誰にも真似のできない個性を感じさせられるスペシャルな感受性です。
 しっかりとしたファウンデーションの元に、パンクにはじけている作品は、見事な新しい才能の出現を感じさせられました。
 

 

 

 


2007・6・8(金)

 ブラジル滞在生活の長かった西田陽子さんの展覧会は、ブラジルでの日々の生活や大自然の風景と共に、懐かしい時代の日本の日常も切りとった郷愁に満ちたものでした。ていねいに誠実に創られた紙を素材とした作品は味わいが深く人々の注意を引きつけました。
 右脳で感じられ、左脳へと引き渡されたひらめきの設計図を正確なものへと完成させ作品へと定着させている、という感覚・・・。実際に作品のモチーフには建築物が多いのですが、とても知的なプロセスを経た作品に思われます。
 作品に興味を持たれたデザイナー、編集者の方々等、沢山の方にいらして頂きましたが、作家の方自らがご自身のお仕事に関していらして頂くのは本当に希有な事ですので、川本三郎さんにいらして頂いた事は、西田さんにとりましても、また画廊にとっても嬉しい出来事でした。
 この世界には珍しい東大文学部卒業という経歴の西田さん。文学的な感慨深い作品の背景ではしっかりとしたリサーチと計測がなされており、この様な作品の持つエネルギーを時代は必要としているのではないかと思わされます。


 つい最近、京都から東京へと引っ越していらした高橋克也さんの作品は全て色鉛筆で描かれたものでした。
 色鉛筆という画材で大きな作品を色濃く描いていくと、3ヶ月もかかってしまうそうです。夜空を表した深い青色を見ると、とても色鉛筆で描いたとは思えず、かといって他のいずれの画材でもなく、とてもオリジナルな表現です。
 今回は朝日新聞等いくつかのメディアに取り上げられましたが、高橋さんの作品はいろいろな方面の方々から興味をお持ち頂き、反響も大きく、高橋さんのパワーを実感させられました。
 物の形のデフォルメの仕方、画材のタッチ、色彩感覚等、画面から作品に込められた高橋さんの優しいエネルギーが伝わってきて暖かな気持にさせられるのだと思います。
 今日も筆圧に力を込めて色鉛筆を画面に走らせる高橋さんが目に浮かぶようです。 

 


2007・5・24(木)

  ワタベテッサン、日笠隼人、小野田昌輝さんの三人による「男たち」という展覧会が終わりました。
 セツモードセミナーの年齢のバラバラなお友達どうしでした。複数の方の展示は難しいものですが、彼らの描く男性をテーマとする作品は異なる個性が響き合ってとてもよいハーモニーを奏でていました。
 アートディレクターの方がかなりお見えになり、どなたも丁寧に長時間に渡って見て適切なアドバイスを下さっていた事が印象的でした。仕事心をくすぐる作品だったのかも知れません。


 丸山幸子展「空模様」は大きな作品が6点と小品が1点だけという大胆な構成の展覧会でした。彼女が25才の時に初めての個展を決めた時に、スケールの大きな新人振りに驚かされたものでした。
 最初の個展から既に3回目となった今回の個展では更に大きな飛躍を遂げ、丸山さん独自のスタイルを確立できた様です。
 作品の制作以外にも歴史や自然科学等博物誌的な世界、はたまた芸能情報にと、森羅万象に興味のある丸山さんの脳細胞は、真実の扉に触れながら多くの人を引きつける作品を生み出して行きます。

 

 

 

 


2007・5・8(火)

  時としてふと耳にした音楽のメロディー等が、わたしたちをこの現実から少し離れた見知らぬ彼方へと連れ出してくれている、と感じることがあります。
 今年のBOX OPERA展を観た時にまさにそんな感慨をもたらされました。
 東逸子さんの作品から海底や宇宙銀河の空間的なイメージを彷彿させられるのに対して、北見隆さんの作品からは、地中から掘り起こしたアルカイックな時間軸的な世界観を想起させられます。しかも様式をたどりながらもしっかりと北見さんの様式を表出しきっていて素晴らしく、東さんにおきましてはほとんど東さん独自の様式を形作られておられます。
 人間の神秘、不思議が隠される様にして存在している無意識層にひそむ情報を、アーティストによって現実世界へと導かれ、結実した果実を人々へと指し示す営為がなされるなら、これは表現する人、それを受け取る人にとっても、理想的な形態といえるのではないでしょうか?
 北東未科學研究室は、人々の心にふたたび光明を照らす探求をこれからも日夜励み続けていかれる事と思います。
 


2007・4・23(月)

  画廊のテラスの両側に小さな木が植えられていて、その小さな華奢な木にこの季節、白い花が咲き始めます。今は花も散り、6月に実る小さなサクランボのような赤い実を育む準備に入った様です。
 白い花がとても綺麗だった4月の第一週は、大中洋子さんの展覧会でした。大中さんの作品は、丁寧に描かれた見応えのあるものでした。ほとんどが室内の情景ですが、キャンバスにこっくりと描かれた深いテクスチュアによる光と陰の表現が暖かく優しく、作品全体から魅力的な力を感じさせられました。
 
 和田誠さんと安西水丸さんのコラボレーション展が5回目を迎えました。毎年続ける、と決められたわけではありませんが、増々仲良しになられたお二人は、今年のオープニングの日には掛け合いトークも盛り上がり、止まらなくなりました。若いファンの方々に囲まれて立錐の余地もない初日の夜でした。
 同じ画面に描くわけですが、年々お二人の絵が似てきていると思っていたらご本人たちもそうおっしゃっておりました。
 仙人のような境地になる迄続けられたら、(画廊がそれ迄存在するかわかりませんが)おもしろいナ、と思いました。


2007・4・3(土)

  石川さんの作品は、全般的に白い印象ですが、その白色はひじょうに強く暖かです。微妙なパステル色が溶けた白いキャンバスは、石川さんの作品独特の硬質なマチエールと仄かに光を帯びた色彩で見る者の心に迫ります。
 静謐な画面からは、人々の祈りを代表するかのように美しい気配が立上ります。
 彼の作品は本当に白いので、外から見るとまるで空のキャンバスが展示されているかのようでしたが、色々物語る白、様々なものを提示する白でした。
 本当に、もっと多くの方々に見て頂きたい作品です。
 前週の石川さんと対照的に、賑やかなカラフルな展覧会は、8年ぶりの個展の藤井えり子さんです。8年間のエネルギーが溢れて、パワフルな渾身の作品展でした。
 ていねいな仕事ぶりは相変わらずで、立体作品の完成度は名人芸です。
 藤井さんの作品は立体なので気がつきませんでしたが今回、新発見がありました。彼女の作品の表面に描く絵が素晴らしく魅力的なのです。
 藤井さんの才能がまた社会に出て人々に楽しんでもらえる様、がんばって下さい。


2007・3・17(土)

  こじまさとみさんの「ポンカとさんぽ」展は、まっすぐな優しい視線から描いた絵本の作品展でした。完成度が高く、楽しい物語もご本人が作りました。空間的にもスケール感のある広がりのある画面には、デザイン的な要素もちりばめられてオーソドックスな新しさを感じさせられました。
 今の子供たちに、こんな暖かな絵本を読ませたい、と思いました。


 HIROMBERRYさんの個展が今日、終わります。一枚の作品を見ることと共に、作品を展示した空間全体の感覚がまた違う顔を見せてくれるので、フレッシュな驚きがありました。
HIROMBERRYさんは既にイラストレーターとして各ジャンルでご活躍の方ですが、まだ未知の隠された力を感じさせられます。
 色々な人の心に余韻を残して今回の展覧会を終了しました。
 


2007・3・1(木)

 キッタヨーコさんのガラスの作品展では、花の燭台を買いました。昨年は犬の形をした照明器具を、一昨年は天使の羽のついたグラスを買いました。キッタさんの作品が少しずつ生活の中に増えていく事がとても楽しみです。
 キッタさんの様に、火を絶やす事のできない高炉や高温の溶けたガラスを相手に作品を作って行く事は、常に緊張を伴うたいへんな作業であることでしょう。自由自在にガラスを造形しているキッタさんをいつもスゴイナ、と思っています。これからもポップできれいな作品を作り、私たちを驚かせて下さい。


 毎年楽しみにしている民野宏之さんの個展も無事終了して、民野さんは札幌に帰りました。
 今年は「花」ばかりになる、と聞いた時少し不安がよぎりました。花はそれだけで一つの宇宙があり、その気配と存在感以上の何かを表現するということは至難のわざであるということを、過去の様々な展覧会の経験から知っていたからです。
 でも民野さんの花達は大丈夫でした。薔薇も百合もチューリップもそれぞれそれらの花々であると同時に民野さんの花々として生命を持ち、美しく描かれておりました。静謐さから立ち上る強い気品は、周囲の空気さえ浄化してしまうばかりでした。


 今週はデザイナーの市川きよあきさん主催のグループ展です。市川さんが依頼した演劇のちらしを描いたイラストレーター約30名による原画と印刷物を展示しておりますが、ひじょうに見応えのある作品展です。出品者の1/3位の方がスペースユイで個展を開いた方なので、あたかも画廊企画のような感覚です。スペースユイの初期の頃、湯村輝彦さんや霜田恵美子さん、スージー甘金さん等の作品が良くギャラリーの壁を飾っておりましたが、そんな頃を懐かしく思い出します。
 
市川さんは大学では中国哲学を専攻したという、ユニークな個性の楽しい方です!


2007・2・3(土)

 いわしろいずみさんの大掛かりな展覧会が終了致しました。トラと踊り子が主人公の物語にそって、その場面の小さな舞台装置が10点と平面のイラストレーションが同時に展示される、という意欲的な作品展でした。そして等身大の舞台もひとつ登場して、楽しさが満載でした。
 いわしろさんのお友達で構成されるスタッフの方々も、プロの舞台装置家が証明を、作品を載せる台は建築家のご夫妻が構造を考えて、とひじょうにプロフェッショナルなものでした。
 久しぶりの個展でしたが、いつもアイデアに満ちた楽しいいわしろ展をこれからはもっと頻繁に見る事ができそうです。
 
 政岡勢津子さんも14年ぶりの展覧会です。今回は平面作品とグッズの両方を発表致しました。平面作品は、そぎ落とされたシンプルな構成が爽やかでした。グッズは政岡さんのいとこの方が経営する代官山の「カーリーコレクション」という可愛らしいお店のグッズの企画デザインを政岡さんがなさっていて、そちらの最新作を発表したものです。色彩も形も鮮やかでひじょうに楽しいもので、普段は画廊を訪れることのない若い女性たちも沢山入場して、いつもと違うにぎわいを見せました。とても人気の「カーリーコレクション」は、朝の10時半頃から女の子たちが列を作っているそうです。
 作品とグッズとの両輪の仕事を、バランス良く素敵に表現し続けて頂きたいと思っております。


2007・1・19(金)

   新年の清々しい空気の中にふさわしい、深谷良一さんの展覧会と、森英二郎さんの木版画の個展が続きます。
 森さんの作品は芸術新潮に連載された、川本三郎氏の編んだ様々な日本の小説家が描く小説の中の風景を、森さんが取材し作品化したものです。東京の新興都市から網走、松江宍道湖、長野等の日本の風景、ヨーロッパ等の架空の風景まで様々な風景画が、木版画で描かれます。木版画の独特のテクスチュアと森さんの個性が解け合った作品が懐かしいオリジナルな世界を提示していてとても魅力的です。何版も彫刻刀で彫った版木を重ねて刷り上げていくという作業は想像するとひじょうに大変そうに思いますが、だからこそ独特の味わいが出るのだと思います。
 森さんが現代の広重なら、深谷さんはいつしか4代目琳派等と言われ、皆さんから応援されております。今年の深谷さんの作品はモチーフが今までと少し変って森の中の土の上に女性が横たわっていたり、黒いスカートをはいた女性の正座した後ろ姿や、足だけの画面といったものが登場して驚かされた人も多かったようです。静かな日本の情念的なものを乾いた感覚のマテリアルで表現されていて、海外在住のコレクターの方など多くの方の興味を引かれました。難しい世界観を表現なされようとしているのだと思います。


2007・1・12(金)

  明けましておめでとうございます。
 2006年のスペースユイは大活躍中の松尾たいこさんの個展で幕を閉じました。大勢の人々、特に若い女性がたくさん訪れ、華やかな活気のある展覧会でした。
 松尾さんの一見ポップに心地よく見られる作品ですが、類いまれな構成力(直感に裏打ちされた)が、人々の心を強く捉えているのだと思います。
 既に完成度の高い松尾さんの作品ですが、更に人々の心の真髄に迫っていくことを願って止みません。

 


2006・12・7(木)

  約4年ぶりの待望の片山健さんの油絵展が開催されました。
 作品のモチーフである小さな男の子たち女の子たちから発せられる神話的なパワーをしっかりと受け止めたい、と思いました。
 片山さんに次の油彩画の個展会期についての約束はして頂けませんでしたが、次回はなるべく早くに実現されることが、ファンの方々及び画廊の希望です。

 先日Google mapで、画廊の住所を検索していたら、周囲の輪郭のラインがまるで前方後円墳の古墳のかたちになっていて驚いてしまいました。スペースユイは限りなく古墳に近いかたちの部分のセンターラインの上に位置していて、これを祟りと考えるか光栄と思うかは微妙な所ですが、どちらにしても興味深いナ、と思えます。もし時間と興味のある方は、ぜひとも古墳のかたち、見てみて下さいネ。
 それにしても、自分でも遊んでいて言うのもどうかと思いますが、Google mapってアブナクはないのでしょうか?悪用されないことを願ってしまいます。

 片山さんの前の週に行われた小川ひさこさんの久々の展覧会は、グルメの小川さんらしく「食の幸」というタイトルでした。
 流麗な筆のラインと優しい色彩の水彩で表現された作品は、まるでパリやウィーンといったおしゃれなヨーロッパの街を思わせます。
 ゆるぎのなく魅力的なドーイングは、柔らかな雰囲気と芳醇な洗練された世界観を醸し出していました。


2006・11・13(月)

 土の中に、樹の幹やかさかさと重なる落ち葉や木の実たちに、加えて虫や鳥等の小さな命たちに、道祖神的な呪力が与えられて日常的なモチーフを描いているのに二つとない摩訶不思議な世界が広がります。
 不思議さとかわいらしさは天下一品で、子供たちにとってもこんな個性豊かなヴィジュアルワールドは魅力的に決っています。
 ふじたかなこさんの次回の個展までにはきっと何冊かの素敵な絵本が誕生していることと思います。とても楽しみです。 サーカスをテーマに描いたエッチングと動物達の大きな肖像画作品がとても楽しい空間構成になりった島袋千栄さんの個展です。毎年がんばって個展を開催なさる島袋さんですが今年は驚く程の飛躍をとげました。
 島袋さんは絵本などのストーリーを作る力がひじょうに優れていて、個展で文章の仕事が入って驚いたこともあります。
 そんな島袋さんが今、毎週火曜日夜10時よりTV出演中です。 NHK教育テレビ3チャンネルでタレントの中山エミリさんを生徒役にコンピューターアートの先生役で名演しておりますので、ぜひご覧下さい。


2006・10・28(土)

 NHKの連続ドラマの舞台となり、すっかり脚光を浴びるようになった沖縄小浜島から、南の島の風と太陽の気配を運んで下さるはんまけいこさんです.
 いつも小麦色の頬で、明るく開放的なはんまさんは多くの人々の心をとらえ、にぎわいのある一週間となります。そんなはんまさんの作品はおおらかで小粋なヨーロッパ風スタイルのものが多く、東京と小浜島を毎年往復しているうちに活躍の場はどんどんふくらんでおります。
 仕事の依頼で小浜に渡る東京の編集者も多く、本当に皆がうらやましいライフスタイルと思います。
 

 美術大学で日本画科を卒業した有沢巽さんのイラストレーション展です。
 日本画をはじめ、西洋美術の様式美も取り入れた有沢さんのイラストレーションはとても密度が濃くて力強いものです。アニメーション的な世界、独自のキャラクター展開は、これからの現実的活躍が想像されます。


2006・10・14(土)

  安西水丸さんのシルクスクリーン版画はいつも大体10部しかつくりません。
版画としては破格の枚数のエディションですが、購入される方はエディションが少ないほうが嬉しいに決まっていますから、いつもとても人気です。
 和田誠さんとのコラボレーション展が毎年行われておりますが、個展としては実に4年ぶりとなりました。
 水丸さんの作品は明快でフレッシュで、アロマテラピーで柑橘の香りがふと流れてきた時のような爽快感、リフレッシュ感を感じます。
 嗅覚から人が身体的に得る多くの事が科学的に証明されている様に、視覚的情報からも人は元気になるのだ、と当然のことなのに、妙に感動してしまいました。

 シーノさんにはとても色々な作品の引き出しがあって、どれも優れておりますが、中に古代の洞窟に描かれたような気配を発する動物達がいて、私はそれらが一番すきです。前足のポーズや体全体、顔の表情がイラストレーションではなく、アートでもなく、あえて言うならばまだ呼び名のない絵師?のような人がまだ人々が神性の様なものとつながっていた頃に描いた絵です。シーノさんはアフリカでよくそういう絵を描く人と出会ったと言っておられました。
 動物を描く人に時々そういう感覚を覚えますが、動物自体が発するものか、或いは描く人にその感覚が宿っているのか、どちらにしても素敵です。

 


2006・9・30(土)

   空を、海を、草原を描き続ける岸田ますみさん。灰色の空と、連なるブルーグレイの海が、油絵の具の滑らかな心地良いマチエールにより、キャンバスの広がりの中から独特の情感をかもし出します。
 人気のない孤独な地平線と、くり返し表現される暗色が続く空と海の色彩は、寂寥感に溢れ、謎めいています。明るく活動的な作者のイメージと、作品のイメージが直結しないところも興味深く人の心を捕らえます。
 この、言葉で表しきることのできない世界観を、誰の心にも共通する大きな自然をモチーフとして表現し続けていらっしゃると思います。


 大学の工芸科出身の卯月俊光さんは、染色等の工芸の知識と技術をフルに駆使して自己の表現に生かしております。従って彼の抽象作品のマチエールは独特で、デリケイトな感性豊かな色感が最大限に生かされることになります。
 卯月さんの独自の形たちは、月や山々など自然の形態のものと有機的流動的な創造的な表象のものとの組み合わせによって無限に生まれいずるかのように思えます。
 天性の色感と造形力、そして技術的な力が加わって、ひじょうに完成度の高い作品が生み出されます。
 工芸科出身の方の歩み方でこれまでいらしたので、これまでメディアに作品が使われたことがない事が信じられないほど、イラストレイティブな方向性と可能性に満ちています。


2006・9・15(金)

 田村愛さんの作品はシルクスクリーンという技法にもかかわらず、透明感がありヴィジョンも大きく開かれています。山々を吹き渡る風や水辺の都市など具象とも抽象とも分けがたい画風で描いた風景作品など、おおらかで美しく、見応えがありました。一見静かな画面ですがよく見るととても動きやリズムがあり、優しい音楽が聞こえてきそうな気配です。このような作品がどんどんイラストレーションとして広がってほしいものです。
 

 河邊香さんの世界観に関しましては、踏み止まって、わたしたち共有のこの空間の中で、時間を閉じこめた少女たちの生命を息づかせ表現し続けていくか、或いは境界を超え、新たな領域に飛翔していくのでしょうか・・・・。
河邊さん独特の作風は、イラストレーションとして今の時代需要も多くなるのではないでしょうか? 
これからもずっと、見守らせていただきたいと思っております。


2006・9・4(月)

 東京でのせわしない日々も終わって、小渕ももさんはチェンマイの我が家に戻られました。
ももさんの絵は昔からドカーンとダイナミックな感じでしたが、タイに住むようになってからます々大らかになりました。
 日本の、東京のリズムとは違うリズムがももさんの絵の中には息づいていて、大きな画面の中に花や果物や月や動物たちがぽっかりと描きだされていて、見る者をなんともなごませてくれます。
 ももさんの家の隣にはチェンマイの巫女の元締めのような女性が住んでいて、一年に一度チェンマイ中の巫女達が集まって来るパーティーが開かれ、彼女達はその身を満艦飾に装って集まって来るのだそうです。そんな女シャーマン達が描かれた絵がすごく興味深かったです。様子を見に行ったももさんもパーティーに招き入れられ同席したそうですが、皆で歌い踊って中にはトランス状態になってしまう人もいる、等とめったに経験できることではないことを淡々と語るももさんでした。
 巫女といえば、シャーマニズム的要素というかのようなテイストが伺える国井節さんの作品展、迫力満点の素晴らしいものでした。
 国籍も時代もどこかわからない色々なテイストの混ざった架空の場所で、人々や動物達が陽性な楽し気な日々の営みの中で不思議なパワーを放射しています。それらのエネルギーが観客にも伝わって、皆元気になって帰っていくのです。
 ラテンアメリカのようでもあるしアフリカのようでもあり、原初的でもありますが、まさしく現代の我々の近くのものであるのが不思議です。
何故こういう作品になるの?といろいろな人から聞かれて「わかんないのよ。手からでてきちゃうの。」と答える国井節さんに軽いデ・ジャブーを覚えました。そういえばスズキコージさんが同じ事を言っていたな・・・と。二人とも何度も何度も生れて来ていろんな国でいろんな時代で経験したことをDNAが覚えていて、本人は行ったこともない地球上の場所への愛着が作品の中に出て来てしまうのでしょうか?
 ご本人も絵と同じく陽気なパワーに溢れていて、国井さんがそばにいるだけで、みんな自然に笑みがこぼれます。
 


2006・8・19(土)

 永井さんの一週間は幸福感溢れるパーティーから始まります。
 毎年この季節に決まって開催される永井さんの個展の始まりは、真夏の訪れと海の空気を画廊に運んで来てくれます。
 ある時期から永井さんの友人の岡田さんが永井さんと集うお客様の為に主催して下さる本物のシェフ顔負けのディナー付きのオープニングパーティーがセットされるようになりました。今年で5〜6回目になると思いますが、今までに、スパニッシュ、プロヴァンス、イタリアン、とテーマを決めてきましたが、今年は南イタリア(シシリー)風で、お料理は前菜からデザートまで全部で何と13種類も出されました。
 センス良く実に美味しいので、毎年永井さんの作品と共にこのパーティーを目標に集まって下さるお客様も多くなりました。
 実のところ、私はオープニングパーティーはシンプルな程良いと思っており、飲み物だけでも良いのではと、皆にお伝えしている手前、ちょっと不公平と誤解されてしまいそうですが、岡田氏主催のこのパーティーはオープニングパーティーというよりも「どなたにも開かれたゴージャスなお食事会」ともいうべきものです。 
 岡田氏はお料理を自宅で完璧に準備し、ギャラリーではご持参のシンプルな美しい器にセッティングするだけなのです。画廊スタッフもこの日ばかりは客の一員になって岡田氏におもてなしをされてしまいます。新鮮な魚介類も野菜も、何十人来ても食べられるという気前の良さです。
 そんな風にして下さる友だちを持つ愛されている永井さんもさすがに遠慮心が芽生え、今年はもういいヨと言った所、今年も来年もヤル!といわれたそうです。興味を持たれた方はぜひ一度お出かけ下さい。来年もありますので・・・。
 何だか作品よりパーティーのことばかり述べてしまいましたが永井さんの作品は毎年どんどん洗練されていて、もう来年が楽しみ・・・というほどです。
 そのライフスタイルのようにラフでさり気ないけれど、重層的なメッセージが込められた作品はひじょうに見応えのある美術作品です。
 磁石のようにいろいろな人を集める永井さんと永井さんの作品には、切ない思い出の音楽や恋愛や個人的な体験などが淡々と込められて、幸福感やさびしさ、様々な感情をいっしょに感じさせられるのです。
 

 夏が好きな人がもう一人。須川まき子さんも夏のこの季節を選びました。直前の申し込みだったのですが、永井さんの会期を少し減らし、ユイスタッフの夏休みも少し削ると須川さんの個展を開催することができたのでした。
 女の子たちのエロティシズムが大胆にのびやかにくりひろげられました。ロットリングのラインが気持ちよく流れ、楽しげに柔らかな身体の線を描きます。緻密なレースの小さな衣装も美しく描かれています。
 劇画でもないアニメでも絵画でもない、ジャンルに閉じ込めようとしてもフレームから羽ばたいてしまう少女たち=須川さんは、まだ名付けられていない世界で力強く生き、創造の翼を広げます。
 しかし、むずかしいと言われているペン画技法においてにおいて、これほどまでにしっかり表現できる技術力は本当にたいしたものです。
 かなり客観性の感じられる表現に対して作者は男性と思われた方もかなりいらっしゃったようで、清潔感溢れる女性が作者と知り、驚かれる方もずいぶんおりました。
 真夏の会期にも関わらず、大勢の方々にいらして頂き、とてもたのしくにぎやかな展覧会でした。